“Toward Human Security:

 A Gender Perspective on Alternatives to War Systems”

「人間の安全保障―戦争システム転換へのジェンダーの視点」


2011年のIIPE(国際平和教育関係集会)は、東京郊外の国立女性教育会館を会場に、8月12日(前泊)から19日の日程で開催されます。

 米国「ナショナル・ピース・アカデミー」(IIPE事務局)の主催、「平和教育地球キャンペーン」(GCPEJ)の連携によって実施され、日本国内において平和の文化の促進にとりくむ「平和の文化をきずく会」の協力も得て準備されます。

 テーマは「人間の安全保障―戦争システム転換へのジェンダーの視点」です。

 IIPEは1982年にはじまりました。以来、世界各地から平和教育にかかわる教育者や専門家、活動家がの参加のもとに実施されてきました。さまざまな経験を持ち寄り、寝食をともにし、たがいに学び合うことがおおきな特徴となっています。平和のための教育に関して、さまざまな実践および批判的な問いのもとに、参加によって学ぶ原理が追究されてきました。

 2011年度では世界各地からの参加者とともに、日本ならびにアジアから多くの参加が期待されています。平和ならびに安全保障に関して、文化を異にする海外からの参加者とともに、多角的に、理論と実践を深めることをねらいとしています。多様なあり方を知り、それらをどのように実践するか、暴力をなくし、正義による世界の安全保障を実現するシステムを実現するための具体的な手立ての可能性を検討していきます。人間の安全保障をはじめとして、核廃絶や平和への力量形成、青年の参加、日米関係および日本とアジアの関係、とくに現在の国家間の安全保障を転換するにはどのようにしたらよいか、これらのテーマに関する報告やワークショップをとおして、さまざまに論議を深めます。

 きわめて軍事化された昨今の政治状況において、すなわち現在の安全保障は、紛争解決のための武力行使を容認し戦争を合法であるといいます。この安全保障を転換させることが、平和教育の重要な役割となります。地球の未来にとって、人びとが人間らしく暮らすことができ、また生態系の保全が欠かせません。たびかさなる戦争や武力紛争が起こり、また武器貿易や核拡散、国家や非国家アクターによる暴力による紛争や戦争などによって、地球は危機に瀕しています。そこで主流となっている安全保障の考え方を問い直す必要があるわけです。国家や国際的な安全保障、あるいは人間の安全保障に関連して、平和や人権、人間の尊厳、福祉、正義、多様性、インクルージョンを可能する非抑圧的な社会的・政治的秩序、生態系への責任、民主的参加も課題となります。

  IIPEをはじめたベティ・リアドンは、「世界のさまざまな現実の問題を解決するあらたな安全保障をつくりあげるには、人間性による想像力が必要であると」言います。人類愛につらぬかれる安全保障制度とはどのようなものか、さまざまな意見をもとに、考えを深め、提案し、それを実現するための共同でのとりくみが、IIPEという学習コミュニティで追究されます。

 軍事主義とジェンダーへの課題は表裏一体のものです。女性や弱い立場の人びとを周縁化し、社会階層が形づくるのが構造的暴力です。そのようなジェンダー化という構造的抑圧のメカニズムについての理解はきわめて不十分だといえます。2011年のIIPEは、現在、世界に蔓延する大人や子どもをとわずあらゆる女性を苦しめ、男性にとっても人間らしい生活を阻害する要因に注目し、軍事による安全保障を問い直すための探求をすすめるために、よりひらかれた実りのある対話をすすめる場となるでしょう。

 女性へのさまざまな暴力の事例が、世界のいたるところで、また社会のあらゆる場でみられます。それらの普遍的なあるいは地域固有の課題について、日本や米国をはじめとするジェンダー差別や暴力にたいして、とりくんだたくさんの事例があります。それらは、女性と平和及び安全保障に関する決議(S/RES /1325)や、女性差別撤廃条約、国際刑事裁判所ローマ規定、北京行動綱領、日本国憲法9条などの成果とつながっています。こうしたこれまで、戦争をなくし、ジェンダーの抑圧からの解放のための成果に学び、人間の安全保障をはじめとするもうひとつの別な安全保障のあり方への視点によって、ジェンダーの平等について、さらなるェンダー差別へのとりくみをすすめる場にIIPIがなるものと思われます。