IIPEのふりかえりと今後

(淺川 和也)

 

IIPEでのこと、今後、どのようなかかわりですすめるかを考えるたいとのことで9月11日にERIC(国際理解教育センター)において会合がもたれた

 

参加者は、角田および菊地恵子、奈良、淺川ほか、東海学園大学の3年生3名がこの会合に参加した。IIPEにボランティアとして三原さんは参加した。「皆、おたがいを尊重して、すすめられていた。よいところを認めるような雰囲気が印象にのこっているとのこと。村瀬さん、横山さんは、ともにサークル運営にかかっており、運営をどうするか、ERICの壁にはられていたサインに注目をしていた。一見、この会合の趣旨とはかけはなれているように思えるものの、大きなイベントの後、どのように活動を継続すること、ひとびとのつながりをつくるのを思案するのには、共通点があるようにも思う。

 

IIPEは今年8月11日から19日の日程で埼玉の国立女性教育会館で実施された。International:国際、Institute:研究所という意味もあるが、この場合は研修会、P:平和、E:教育となる。およそ30年前にコロンビア大学のベティ・リアドンさんらによってはじめられた。諸事情から事務局はかつてのコロンビア大学平和教育センターから、現在はナショナル・ピース・アカデミーとなっている。

 

 これまで、淺川は何度か参加し、2011年に日本での開催を準備してきた。近年、プログラムや要項はNYの事務局でつくられるようになり、形式が整ってきたとのこと。今回も同様であった。

 

 しかしながら、助成や共催団体など、主催地でのようすが色濃く反映されている。4年前はブダペストのEUユースセンターでの開催であった。そこは「コンパス」(明石書店)というEUの人権教育のテキストをつくっているところでもあったので、人権がテーマであった。また、3年前のコロンビアでは、民主主義の推進が眼目であった。4年前はアフリカからの参加者もあったが、現地の参加者はそう多くはなかったようにおぼえている。3年前はスペイン政府系の助成があり、中南米からの参加者が多く、スペイン語と英語の同時通訳がなされていた。

 

 今回は、昨年の震災があり、1年延期することになった。一昨年から昨年にかけて、連携ミーティングとして準備をしていたが、昨年は、場所の再吟味など、労をかけたこともあり、きちんとした準備会合をひらかずに実施にいたった。今年は、11カ国、30名あまりと例年の半分の規模であったが、日本の参加者が半数、参加者同士の関係はより充実したものとなった。

 

 日本での平和教育はヒロシマ・ナガサキや戦争の悲惨さを伝えようとすることが主であったが、世界では、さまざまである。今年の特徴は、平和教育をよりひろくとらえるところにあったといえる。農や食とのかかわり、精神性とのかかわりのことが共有されたと思われる。ベティリアドンさんは、コンプリヘンシブ(包括的な)平和教育を提唱した。その根幹は、戦争の根源は家父長制にあり、ジェンダー問題を中核とされている。また、地球憲章にも注目し、エコロジーは平和の基盤であるという。今回は、よりひろく、平和教育へのホリスティックな接近がなされたように思う。

 

 菊地恵子さんは、今回の全体会やワークショップのなかで、生物多様性への視点を指摘した。シードセイバーや反GMなどの運動では、現代の農業は多国籍企業によって操作され、ローカルでの生存をおびやかすものとなっていること。また、ピースボートがイスラエルとパレスチナの青年を乗船させ、相互理解をはかったプログラム、紀伊国子どもの村のことなど、素晴らしいが一般に知られていないようだと感想を述べられた。生物多様性、ノンフォーマルな和解の試み、あるいはオルタナティブ教育も平和教育とされていることがわかる。

 

 わたしたちにとって平和とは、問いかけてみると、「おいしいものを食べる、幸せと感じる、不自由がない、戦争のない状態、欲がないこと」などが思い浮かんだ。 植民地主義によるグローバル化、すなわち軍事化による平和でない状態は、弱い立場の人びとに甚大な影響をあたえる。ひとびとの人権ともいえる「ふつうの暮らし」を保障するのが平和である。それを実現するのが平和教育なのである。

 

 奈良さんは公開行事がなされた15日のみの参加であり、その際の武者小路さんの話が印象深かったとのこと。角田さんのノートから「平和教育ではなく、教育全般の責務」を指摘されたこと、また日本の植民地であったアジア諸国に対して、信頼される謝罪をすべきであるとのこと、誰しも平和を願うのだから、それをそとにだすことができるはずだ」など、エッセンスが紹介された。

 

 奈良さんは「憲法9ちゃんと走る会」というホームページをつくられたとのこと。いつも「日本国憲法 - 童話屋」を持って歩いているという。憲法の意義を認めつつ、現実はどうするかが課題である。憲法9条があるのに、自衛隊は存在する。平和憲法のもとで、なぜ、日本にこんなにもの米軍基地があるのか。現実から疑問が湧く。それに対して角田さんから、孫崎享著「戦後史の正体」はよい本とのおすすめがあった。また、現実を変えるちから人びとが得るには、はたらきかける方法を知り、実行するようになることが求められると「アドボカシービンゴ」が紹介された。とかく教育関係者は、教育は中立であるかのような言説に従うが、それは無責任であり、実際の行動の選択肢を持つようになることが、重要なのである。

 

 創造的な場をつくるには参加型の方法が必要である。情報をもつ者が話をし、拡散し、場を占有しがちであり、いかに参加型にするかが課題である。角田さんから1例として「良い点・悪い点」を対比する、連想図をつくる(7項目、3段階)など、ERICでは、人がものごとをとらえる時の様式として「12のものの見方考え方」(http://www.eric-net.org/detail/TM-20.html )にまとめられているとのことの紹介があった。

 

 奈良さんから、オスプレイ反対集会にはなぜ10万人集まったのか、なぜか考えたいということで、その要因を出してみようということになった。角田さんから「2分で7つだす」というめあてが示された。思考を活性化するには、めあてがあり、自分を追い込むことが必要とのこと。ペアやグループで共有する時間はなかったが、思考や話し合いをすすめには枠組みが必要だということを実感できた。よりどうクリエティブになるか。一方的な情報の伝達の場からは、次につながらない。

 

 IIPEで25周年の時にCIPEとして、コミュニティ・ピース・インスティチュートをすすめる提案があったことを想起して、日本でもできないかと思う。例えば3日間のプログラムを開発できればよい。市民性をはぐくむ、具体的に、わたしたちは、どのようなスキルを持っているのか、調査・研究をすることが必要との提案があった。西巣鴨でやれば、NSIPEとなる。環境教育や開発、人権、平和教育を統合するオーストラリアでジョン・フィエィンらによるTSWは有意義のとのこと。http://www.unesco.org/education/tlsf/mods/theme_c/mod14.html

 

 また、IIPEに参加されたフィリピン・ミリアム大学のロレッタさん、ならびにハスミンさんによる著書の翻訳をしたらどうかという提案も角田さんからなされた。

 

Peace Education: A Pathway to a Culture of Peace

Loreta Navarro-Castro Jasmin Nario-Galace, Published in 2008 by the Center for Peace Education

 

Part I 平和と平和教育についての全体的な理解に向けて(ページ番号)(ページ数)

第 1章          平和と暴力についての一つの全体的な理解 (13)(8)

第 2章          超形的教育としての平和教育 (21)(10)

第 3章          平和教育の包括的なスコープ (31)(7)

第 4章          平和の資源としての信仰とスピリチュアルな伝統 (39)(10)

Part II 平和教育の鍵的テーマ

第 5章          人間の尊厳を掲げて (49)(17)

第 6章          偏見に立ち向かい寛容を育てる (67)(10)

第 7章          非暴力をすすめる (77)(11)

第 8章          戦争のシステムに立ち向かう (89)(11)

第 9章          対立を解決し、超形する (101)(14)

第 10章       地球の資源を共有する (115)(9)

第 11章       地球をケアする (125)(7)

第 12章       内的な平和の土壌をつくる (133)(4)

Part III 平和を実践する学級、教員、学校

第 13章       平和である学級を創り出す (137)(6)

第 14章       平和教育における教授-学 習法と方略 (143)(7)

第 15章       平和教育者の資質 (151)(4)

第 16章       学校あげてのアプローチ (155)(6)

結 論: 未来へのビジョン (161)(1)

参考 (163)(142)

(角田 尚子)

https://www.facebook.com/notes/平和教育地球キャンペーン/peace-education-a-pathway-to-a-culture-of-peace目次/448141545228761